ベストタイム更新にはレーススピードでたくさん繰り返す練習が重要で、目標タイムのラップタイムを基準に設定すべきと書きました(目標設定しよう4)。ですが実際の練習でのレーススピードの再現には次の点に注意が必要です。

  • 試合と練習では水着が違う
  • 練習ではインターバル形式がほとんどで、ターン動作がタイムに含まれない
  • 練習では疲労やコンディションの波があり、設定タイム達成が困難な場合がある

これらの影響がありますから、実際の練習では忠実なレーススピードの再現は簡単ではありません。レーススピードの再現が重要となるのは、レース中の運動強度を再現し、負荷をかけることが必要だからです。「レーススピードの再現=レース強度の再現」ということです。

このレース強度の再現にはレース中のテンポ(ストロークタイム)を再現すると良いです。テンポの再現によって、水着の違い、ターン動作の有無、疲労や調子の良し悪しでタイムが影響をうけてもレース強度をかなり再現できます。私が個人的に調べた範囲ですと、トップ選手のレーステンポは種目距離で次のようにまとめられます。テンポとはストロークタイムのことで、泳法動作1周期にかかる時間(秒)です。4泳法では手のかきを基準に計測することが一般的です。

中央値をイメージしています。実際はこの値を前後します。選手タイプによっては当てはまらないこともあるので、あくまでの参考程度にしてください。自分のベストレースや、目標とする選手のデータを参考にするも良いと思います。

レーススピード・強度の反復練習の際にテンポも計測することで、レース強度の達成が確認できます。もし、タイムが落ちていて、テンポの再現できていない(設定以下)ようであれば、それは強度の再現ができていないので、休息時間を増やす、本数を減らす、練習を中断するなどの対応が必要でしょう。理想的な強度管理には、水着の影響(練習水着でのタイム補正)とターン動作が含まれることの影響(回転動作は0.5~1.0秒程度)を考慮した綿密な目標タイム設定と、タイムとテンポの計測が必要です。

「練習中にタイムとテンポを同時にとる何で無理だよー」っていうご指摘がありそうです。どうしたら良いかは妙案思いつきません。テンポトレーナーを利用して(キャップ内に装着)、で選手個人のテンポを設定し、レスト中に音でそのテンポを確認させながら、練習すると良いかもしれません。「ピッチ音がうるさくて、うっとしい」と言われたらどうしようもありません。