これまでの水泳の研究教育活動から学んだことを整理し、社会に貢献する目的で競泳に関する情報発信をすることにしました。競技スポーツとしての競泳において、すべての選手やコーチが豊かな人生を送るために役立てればという想いで始めることにしました。きっかけは競泳のコーチングの場面で、次の様なことに直面することが多くなったからです。

  • 「記録が伸びなくて、練習が辛いです。」
  • 「練習を休むと、チームメイトから犯罪者のように扱われる用に感じます。」
  • 「水泳に人生を捧げる意味を見失って、練習する意欲がわきません。」

水泳というスポーツが楽しく好きだから競技を続けているのに、練習がきつくてつらい、自己記録もなかなか更新できなくて水泳というスポーツに苦しめられている選手が少なくないと感じました。

競泳は水の抵抗との戦いなので、技術的な要因が最終的な競技パフォーマンスに強く影響します。また一方で競技結果が記録として客観的に表れ、決められた距離を全力で泳いだ時間を競う測定系の競技です。よって体格、筋力といった体力的な資質も競技パフォーマンスに大きく影響します。身体の発育発達段階にあるジュニア選手については、発育発達による生物として成長と、トレーニング負荷による超回復によってぐんぐん記録が伸びます。この段階で指導者や支援者によって、選手の自立を促す水泳の科学(知識や理論)の教育がなされないと、自ら競技パフォーマンスを改善させるための思考が育たずに、コーチや指導者の言われるがままの練習を行うだけになります。

記録が順調に伸びている時期は、問題ありません。「コーチから課されるメニューをただ頑張るだけでそのうちベストが出る。」こんな感じでしょう。ただし、記録が伸びない時期が長く続くと、練習を頑張れば記録がでるという思考(因果関係)が崩壊します。そうなったときに、競泳に関する知識や理論を選手が正しく理解していれば、コーチのアドバイスやその他の情報も活用し、現状打破の糸口を見つけやすくなります。自発的に速くなるための理論を組み立て、このプロセスを楽しむという内発的な動機づけが生まれます。

競泳は結果が記録で客観的に数字で表されるがゆえに、記録の向上による外発的な動機づけの影響が大きいスポーツだと思います。この記録の向上(結果)に囚われすぎると、「速く泳ぐための理論を発見する」や、「新しい練習方法を試しみる」などといった普段の練習で出来る事の楽しみに目が向きません。そうなると普段の練習はきつい運動を耐え忍ぶだけとなり、競技生活の多くを占める練習を楽しむことができなくなってしまいます。競技スポーツは勝ち負けの世界ですから、「負け」からは逃れられません。体の成長もとまるので記録の停滞(スランプ)も必然です。この負けやスランプから多くを学び、練習で色々挑戦することに喜びが感じられない競泳との向き合い方では、競泳という競技スポーツで幸せにはなれないはずです。

すべての選手やコーチが笑顔で水泳を楽しむためには、水泳の科学の理解が欠かせないと思います。そんなお手伝いができればと思っています。偉そうにすいません。自分の勉強のために発信しています。間違いがあればご指摘いただき、議論ができればとも思っています。なお、画像は著作権フリーですので、自由に使ってください。