ローリングは推進力に貢献しているのか?

クロールを考えるときによく議論になる「ローリング」について考えてみます。選手やコーチ達との対話において、ローリングによって推進力を高めるという事をよく聞きます。では、本当にローリングによって推進力の向上が期待出来るのかを考えてみます。

結論は「YES」になります。ただし、これについてよく考えてみると私自身が感じていた、もしくは他のコーチ達や選手から聞いたローリングによって推進力が高まるメカニズムには少し誤解がありました。クロールのローリングについて資料等で調べましたので解説します。

まずこのメカニズムの理解には、流れの中において物体の移動方向と作用する力の方向による定義である揚力と抗力について抑えておく必要があります。抗力は、物体の移動方向とは平行逆向きに作用する力の成分を指します。揚力は、物体の移動方向とは垂直に作用する力の成分を指します(揚力の発生にメカニズムは別記事で取り上げます)。

クロールのローリングは手が上下左右に動くことで揚力として推進力に貢献すると考えられています(Payton et al., 2002)。実は、以前はローリングによって推進力が高まるメカニズムを抗力成分の増大と誤解していました。「腕の力のだけでかくよりも体幹の回旋(捻じり)を伴ってかいたほうが、力強くかけるから沢山進むよ。」なんて教えていた時期もあります。多分、この教え方は間違ってます。

水中で発揮される推進力は手の平や前腕で作る面積、移動速度、そして加速度(付加質量:これについても別記事で取り上げたいと思います。)によって決まります。ローリングによって肩の位置が後方に移動して、手(前腕も含む)の後方への速度もしくは加速度が高まれば、抗力が増大することになります。しかし、ローリングよる肩の運動は正面から見た平面で移動するだけなので、ローリングをしても肩の位置は後方には移動しません。だから、ローリングによって手の後方への移動速度の増加が期待できないので、抗力が増大するという説明は正しくないと言えます。

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