ローリングが生まれるメカニズムを理解しよう

クロールのローリングを考えよう第4回では、ローリングがどんな力によって生み出せるのかを解説します。クロールのローリングの先行研究を読む(Yanai 2001, 2003)とローリング(今回は胴体部分のローリングに限定)は、

  • 泳者に働く抵抗力①
  • 泳者に働く浮力②
  • 泳者の体の部分間でやり取りされる内力③
ローリングのトルクソース

の3つが主なソース(動力源)です。抵抗力①はローリングに関与する抵抗力なので正面から見た平面上の方向に働く抵抗力(主に手や足に働く力)です。内力③とは体の部分間でやり取りされる力のことです。Yanai(2004)の研究によると、クロールのローリングは主に浮力(②)によって生み出されていると述べられています。したがって、抵抗力(①)や内力(③)に多くを頼ってローリングを成立させようとしたり、これら(①③)がローリングを妨げるように働くと、速く泳ぐための推進力が犠牲になったり、ローリングを行うために無駄な動きが多くなったりするので効率的ではありません。速い選手ほどこの浮力を効果的にローリングに活用しているデータがYanaiの研究によって示されています。

浮力によってローリングするメカニズムを簡単に解説します(下図)。浮力は水没している部位のみに働きます。リカバリー動作の姿勢では非呼吸サイドの水没部位に上向きの浮力が働きます(図のA)。この片側に浮力が働くことがローリングの回転力(トルク)となるのです。この浮力によるトルクは体の開きを止めるように作用し、また逆側へのローリングのきっかけとなって、ローリングが成立しています。つまり、泳ぎだしのひとかきによって体を傾ける事ができれば、後はこの浮力によるトルクを利用することでローリングを受動的に持続することが可能なのです。

つぎに、ローリングを成立させるために泳ぐ人がどうすればよいかという点について考えてみます。ここまで説明してきたように、クロールのローリングは浮力のトルクによって受動的になされます。ですので、浮力によるトルク(②)以外の泳動作によって生み出されるトルク(①や③)はローリングの回転を助ける、あるいは必要以上に妨げないように発揮するという考え方が重要になります。

今回はここまでとします。