「ローリングのタイミングはプッシュの時だ!」

ここまでローリングの役割やメカニズム等について解説してきましたが、ローリングを強調すべきタイミングについて書いてみたいと思います。

結論は「プッシュ(手のかきの後半)のタイミングのローリングを意識する」です。今回の解説はおもにKudo et al.(2017)の論文を参考にしています。

「何故か?」について解説します。ローリングによって揚力発揮(動かした方向とは垂直に働く力)を大きくするという観点で話をします(揚力発揮についてはこちら参照)。手のかきの前半(プル局面)は手を内側にかきこむインスープが起こります(下図)。また手のかきの後半(プッシュ)は手を外・上に移動しながら手が水から抜けていきます。

手のかきの前半でローリングが起きると肩の移動方向と手の移動方向が逆向きになります。ローリングがインスイープでの内側への手の速度を相殺してしまいます。ですがインスイープが終了した手のかきの後半部分のプッシュ局面だと、ローリングによる肩の動きは手の外側へ動き(アウトスイープ)や上側への動き(アップスイープ)を助けるように機能します。つまり、手のかきの後半部分でローリングが起きると揚力発揮に効果的に貢献するのです。(*末尾に補足あり)

このことを踏まえると、手のかきの前半部分(プル局面:インスイープ時)ではローリングが緩やかになるように止めるような意識をし、手のかきの後半にさしかかるタイミング(手が頭あるいは肩の下に位置するタイミング)で、一気に反対側へ向きを変えるようなローリングをすると良いです。こうすることでローリングで効果的に揚力発揮にができるようになると考えられます。またこのタイミングに先行して同側の足で下向きのキックを入れると、キックによるトルクがローリングを助けるように働くので効果的です(ローリングを考えよう6を参照)。ローリングの動力源は浮力によるトルクですが、泳いでいる選手の意識で浮力をコントロールするのは困難だからです。

「手のかきの後半(プッシュ)で逆サイドへのローリングを意識する」が意識すべきポイントです。いつも長いので今日はここまでです。

補足:Kudo et al.(2017)の論文では、手のかきの前半分(プル局面)では、反対サイドへのローリングの回転速度が高いほど、手のひらで発揮される揚力が小さく、逆に手のかきの後半部分(プッシュ局面)では、反対サイドへのローリングの回転速度が高いほど、手のひらで発揮される揚力が高いことが報告されています。